平安朝歌論研究 序


 この稿は二部構成をとり、Ⅰ部では、十世紀末から十一世紀前半にかけての著名な歌人であり歌壇の指導者でもあった藤原公任の歌論を論考し、Ⅱ部では、平安後期歌壇の両雄というべき源俊頼と藤原基俊の歌論とその対立の意味を勘案する。

 

 公任は『古今集』成立後百年足らずして登場するが、その公任の歌論を古代和歌の歌論的完成と成熟という視点から取り上げたい。

 平安後期の和歌は、いわば古代和歌の行き着いたところという意味合いを持っているが、その実相を俊頼・基俊両者の歌論とその相違対立を通して照らし出したい。これには、さらに、新旧歌論の対立であるとされている俊頼・基俊の対立の歌論的根拠を明らかにすることによって、一般的に存在する新旧文学論上の対立の理路を把捉し、その対立を、喧嘩両成敗的にでなく、普遍的に解き明かしたいとする筆者の主観的な問題意識が存することも、蛇足ながら付言しておきたい。 


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Ⅰ部 公任歌論の基底と頂点  六 姿〈きよげ〉の論